乳腺炎と食事の関係|予防に効果的な食材と避けたい食べ物

乳腺炎と食事の関係|予防に効果的な食材と避けたい食べ物

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授乳中のお母さんにとって、乳腺炎はつらいトラブルの一つです。実は、乳腺炎の予防や改善には毎日の食事が深く関わっています。脂っこい食べ物は良くないと聞いたことがあっても、具体的にどんな食材を選べば良いか迷う方も多いでしょう。
この記事では、乳腺炎と食事の関係を分かりやすくまとめ、避けたい食品や積極的に摂りたい栄養素、日々の食事の工夫について解説します。
神谷 仁
神谷 仁かみや母と子のクリニックかみや母と子のクリニック院長/沖縄県産婦人科医会副会長1985年5月に琉球大学産婦人科に入局し、昨年6月に分娩取り扱いを終了するまで2万人以上の分娩に立ち会ってきました。生理、出産、育児、更年期等の悩みなど女性の幅広い年齢層に対応できるクリニックの院長として地域医療に取り組んでおります。プロフィール詳細を見る

乳腺炎とは?症状と原因を知っておきましょう

授乳中に起こりやすいトラブル

乳腺炎は、授乳中のお母さんに比較的よくみられるトラブルの一つです。乳腺に母乳がたまって通り道がふさがれてしまったり、細菌が入り込んで炎症が起きたりすることで発症します。症状としては乳房のしこりや張り、熱を持ったような痛みが出るほか、発熱や倦怠感を伴うこともあります。特に「母乳をあげているのに乳房がスッキリしない」「赤く腫れて触ると痛い」といったサインがあれば注意が必要です。発症頻度は報告によって差がありますが、授乳中のお母さんの約3〜20%が経験するとされています(※参考:ABM Clinical Protocol #4: Mastitis, Revised 2014 日本語版PDF https://abm.memberclicks.net/assets/DOCUMENTS/PROTOCOLS/4-mastitis-protocol-japanese.pdf)。

こうした乳腺炎は、赤ちゃんに母乳を飲んでもらうことで改善するケースも多いですが、放っておくと炎症が強くなり、抗生物質などの治療が必要になる場合もあります。早めに気づき、原因を探って対処していくことが大切です。

食生活との関わり

乳腺炎の原因には授乳リズムや乳房の圧迫などさまざまありますが、実は日々の食生活も関係しています。脂肪分や糖分の多い食事を続けると乳腺が詰まりやすくなることがあり、逆に野菜や魚などを中心にバランスよく食べると、母乳の流れがスムーズになりやすいとされています。特に揚げ物や甘いお菓子を頻繁に摂ると、母乳が濃くなって流れにくくなると感じるお母さんも少なくありません。

もちろん食事だけですべてが決まるわけではありませんが、「乳腺炎になりやすい食べ物」「予防につながる食材」を意識することで、日常的なトラブル予防に役立てることができます。授乳期の体はとてもデリケートですから、少しでも安心して母乳育児を続けるために、食生活を見直すことはとても有効な方法のひとつでしょう。

乳腺炎になりやすい食べ物

乳腺炎は、授乳中のお母さんの食生活とも深く関係しています。必ずしも食べ物だけが原因ではありませんが、特定の食品を摂りすぎると乳腺が詰まりやすくなるといわれています。ここでは、注意しておきたい代表的な食べ物をご紹介します。

脂肪分の多い食品(揚げ物・スナック菓子など)

唐揚げやフライドポテトなどの揚げ物、スナック菓子やチョコレートなどは脂肪分が多く、母乳が濃くなりやすいと考えられています。母乳がドロッとして乳腺の中で詰まりやすくなると、しこりや張りの原因になることがあります。特に夜遅くに油っこい食事を続けてしまうと、翌朝に胸の張りを強く感じる方も少なくありません。

乳製品や甘いお菓子

ケーキやアイスクリーム、バターをたっぷり使ったパンや洋菓子などは、糖分と脂肪分の両方を多く含みます。これらを頻繁に食べると乳腺炎のリスクが高まるといわれています。もちろん、完全に避ける必要はありませんが、量を控えてバランスを意識することが大切です。「甘い物が食べたい」と思ったときは、果物や和菓子など比較的脂質の少ない選択肢に置き換えてみましょう。

冷たい飲み物や体を冷やす食事

アイスドリンクやかき氷などの冷たい食べ物・飲み物をたくさん摂ると、体が冷えて血流が悪くなり、母乳の流れにも影響すると考えられています。また、生野菜を大量に食べるよりも、温野菜やスープなど体を温める調理法を取り入れる方が乳腺炎の予防につながりやすいでしょう。

こうした食べ物は「絶対にダメ」というわけではありませんが、授乳中は特に体調や母乳の状態に影響を与えやすいため、量や頻度を意識してコントロールすることが大切です。

乳腺炎予防におすすめの食材と栄養素

乳腺炎を防ぐためには「控えた方が良い食べ物」を避けるだけでなく、「母乳の流れを良くする栄養素」を積極的に取り入れることも大切です。ここでは、授乳期のお母さんにおすすめしたい食材と、その効果について見ていきましょう。

野菜・海藻・豆類でバランスを整える

野菜や海藻、豆類は食物繊維が豊富で、腸内環境を整える働きがあります。腸の調子が良くなると代謝や血流もスムーズになり、母乳の流れにも良い影響を与えます。特に根菜類や葉物野菜は体を温めやすく、授乳中の体調管理にも役立ちます。豆腐や納豆、ひじきやわかめなどを普段の食事に加えると、無理なく栄養バランスを整えることができます。

魚や良質なたんぱく質の取り入れ方

母乳は血液から作られているため、たんぱく質は欠かせない栄養素です。特に魚や大豆製品、鶏むね肉など脂肪分の少ない食品は消化にも良く、体にやさしい栄養補給になります。青魚に多く含まれるDHAやEPAは血流を改善し、炎症を抑える働きがあるともいわれています。週に数回は焼き魚や煮魚を献立に取り入れると、自然とバランスが整いやすいでしょう。

水分補給と温かい飲み物

母乳は約90%が水分でできているため、十分な水分補給がとても大切です。授乳の前後や入浴後には意識して水分をとるようにしましょう。冷たい飲み物ではなく、常温の水や温かいお茶・スープなどを取り入れると、体を冷やさず母乳の流れも良くなります。特に麦茶やほうじ茶はカフェインが少なく、授乳期のお母さんにも安心です。

このように、バランスの良い食事と十分な水分補給を意識することで、乳腺炎の予防に役立てることができます。特別な食品を探すよりも、普段の食事を少し工夫することがポイントです。

授乳中に意識したい食事習慣と生活リズム

乳腺炎の予防には、特定の食べ物だけでなく、日々の食習慣や生活リズムも大きく関わっています。授乳中のお母さんの体はとてもデリケートで、ちょっとした無理や乱れが母乳の流れを妨げることにつながります。ここでは、食事と生活の両面から意識してほしいポイントをご紹介します。

まず大切なのは「食べ過ぎや飲み過ぎを避けること」です。脂っこいものや甘いものを控えていても、全体の量が多すぎれば消化に負担がかかり、乳腺炎のリスクが高まります。食事は腹八分目を意識し、消化の良いものを中心にしましょう。

次に「規則正しい食事リズム」を整えることも重要です。授乳のタイミングに合わせて食事が不規則になりがちですが、できるだけ朝・昼・夕の3回をベースに、間食は軽めにするのがおすすめです。急いで食べるよりも、落ち着いた環境でよく噛んで食べることが、消化を助け母乳の質を保つことにつながります。

また「休養をしっかり取ること」も忘れてはいけません。睡眠不足や疲労がたまると、免疫力が低下して乳腺炎を引き起こしやすくなります。赤ちゃんのお世話でまとまった睡眠が難しい場合は、昼寝や横になって体を休める時間を意識して作ってみましょう。

さらに、体を冷やさない工夫も大切です。冷たい飲み物を控えたり、体を温める食材を選んだりするほか、締め付けの少ない衣服やブラジャーを選ぶことで、母乳の流れがスムーズになりやすくなります。

このように、食べ物の内容だけでなく「どのように食べ、どのように生活するか」を整えることで、乳腺炎の予防につながります。日々のちょっとした心がけが、母乳育児をより快適にしてくれるでしょう。

乳腺炎かな?と思ったらどうする?

どんなに気をつけていても、乳腺炎の症状が出てしまうことはあります。「胸が赤く腫れて痛い」「熱っぽい」「母乳が出にくい」と感じたら、早めに対応することが大切です。ここでは、自宅でできる工夫と、医療機関を受診すべき目安についてまとめます。

まず自宅でできる工夫としては、赤ちゃんにたくさん母乳を飲んでもらうことが基本です。授乳の間隔を短めにし、赤ちゃんの飲みやすい姿勢を工夫すると、滞っている母乳が流れやすくなります。また、授乳の前に温かいタオルで乳房を温めると血流が良くなり、詰まりの改善につながります。痛みが強いときは、授乳後に冷やすと炎症を和らげる効果が期待できます。

それでも改善しない場合や、38度以上の発熱強い倦怠感があるときは、自己判断せず医療機関を受診しましょう。放置すると炎症が悪化して膿がたまる「化膿性乳腺炎」へ進行することもあります。その場合は抗生物質による治療が必要です。薬を飲むことに不安を感じる方も多いですが、授乳中でも安全に使える薬が処方されますので安心してください。

また、繰り返し乳腺炎になってしまう場合には、食生活や生活習慣の見直しも大切です。無理をせず、困ったときは早めにかかりつけの産婦人科や母乳外来に相談してみましょう。「ちょっと気になるな」と思った段階で相談しておくことが、安心して母乳育児を続ける大きな助けになります。

まとめ|食事の工夫で乳腺炎を予防しましょう

乳腺炎は授乳中によく見られるトラブルですが、日々の食事や生活習慣を意識することで予防につなげることができます。揚げ物や甘いお菓子、乳製品の摂りすぎを控え、野菜や海藻、豆類、魚といった栄養バランスの良い食材を取り入れることがポイントです。さらに、規則正しい食事リズムや十分な休養、水分補給を心がけることで、母乳の流れをスムーズに保ちやすくなります。

もし「乳腺炎かも?」と思ったときは、早めに授乳姿勢や生活を工夫し、症状が強い場合は医療機関に相談することが大切です。適切な対応をとることで、重症化を防ぎ、安心して母乳育児を続けることができます。

授乳期のお母さんは、毎日の食事がご自身と赤ちゃん、両方の健康につながります。完璧を目指す必要はありませんが、できる範囲で工夫してみましょう。少しの心がけが、乳腺炎の予防につながり、育児をより快適にしてくれるはずです。気になることがあれば、どうぞお気軽にかかりつけの医療機関へご相談ください。

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