

母乳のやめ方|安心して進める断乳・卒乳ガイド
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断乳や卒乳は、ママと赤ちゃん双方にとって大切な節目です。このガイドでは、母乳育児を無理なく終えるための具体的な方法と、心身のケアについて分かりやすくお伝えします。

母乳をやめる時期について|断乳と卒乳の違い

母乳育児を終える方法には「断乳」と「卒乳」の2つがあります。どちらが良いということではなく、ご家庭の状況に合わせて選ぶことが大切です。
「断乳」と「卒乳」それぞれの特徴
断乳とは
ママ主導で計画的に母乳育児を終えること。仕事復帰や体調不良、次の妊娠など、ママ側の事情で選択されます。スケジュールを立てて進められるメリットがありますが、赤ちゃんが一時的にぐずることもあります。
卒乳とは
赤ちゃんが自然に母乳を飲まなくなること。離乳食がしっかり進むと、次第におっぱいへの関心が薄れていきます。赤ちゃんのペースで進むためスムーズな場合が多いですが、時間がかかることもあります。
あなたに合った方法の選び方
どちらの方法を選ぶかは、以下のポイントを参考に考えてみましょう。
断乳が向いているケース
- 仕事復帰の時期が決まっている
- 体調不良や服薬の影響がある
- 次の妊娠を希望している
- 夜間授乳による睡眠不足が深刻
卒乳が向いているケース
- 時間的な余裕がある
- 赤ちゃんのペースを優先したい
- 離乳食が順調に進んでいる
大切なのは、「母乳をやめること=悪いこと」ではないということ。ママが心身ともに健康で笑顔でいられることが、赤ちゃんにとって何よりの幸せです。
母乳をやめる適切なタイミングの見極め方

母乳をやめる「正解の時期」は、それぞれの親子によって異なります。赤ちゃんの成長とママの状況、両方の視点から最適なタイミングを見つけましょう。
赤ちゃんの成長から見る目安
赤ちゃん側の準備が整っているかを見極めるには、いくつかの指標があります。
- 離乳食の進み具合: 1日3回の離乳食がしっかり食べられていることが最も重要。食事から十分な栄養が摂れていれば、母乳以外で成長に必要なエネルギーを賄えます。
- 水分補給の自立:コップやストローで上手に水分補給ができるようになれば、授乳がなくても脱水の心配が減ります。
- 興味の広がり: 歩き始めて行動範囲が広がったり、おもちゃや遊びへの興味が旺盛になってきたら、赤ちゃんが次のステップに進む準備ができたサインです。
ママの都合で考えるタイミング
ママ側の事情で断乳を選択することは、決してわがままではありません。
- 仕事復帰を控えている場合:職場で搾乳環境が整っていない場合は、復帰の1〜2ヶ月前から準備を始めるのがおすすめです。
- 体調面での理由:体調不良、服薬の影響、慢性的な睡眠不足、次の妊娠を希望している場合も、断乳を検討する正当な理由です。
「授乳による拘束感から解放されたい」というママの気持ちも、とても大切。ママが心穏やかに過ごせることが、結果的に赤ちゃんにとっても最良の環境となります。
避けたほうが良い時期
一方で、母乳をやめるのを避けるべきタイミングもあります。
- 体調不良の時期: 赤ちゃんが発熱や下痢で体調を崩している時、歯が生えかけで機嫌が悪い時は避けましょう。
- 環境の変化が重なる時:慣らし保育の開始、引っ越し、きょうだいの誕生など、ストレスフルな時期は避けることをおすすめします。
- 夏場の暑い時期:脱水症状を起こしやすい真夏は慎重に。水分補給がしっかりできることを確認してから始めましょう。
痛くない断乳・卒乳の進め方【段階別ガイド】
最も大切なのは「急にやめようとしないこと」。計画的に、少しずつ進めることで、ママのおっぱいトラブルも赤ちゃんの精神的な負担も最小限に抑えられます。
準備期間(1〜2週間前から)
スケジュールを立てる:1〜2週間以上かけて授乳回数を減らしていくのが理想的。カレンダーに「いつ、どの授乳を減らすか」を書き出しましょう。3〜4日に1回ずつ減らすペースが目安です。
家族との協力体制:パートナーや家族に、なぜ今始めたいのか、どのような手伝いをしてほしいのかを具体的に伝えましょう。夜中の寝かしつけを代わってもらうなど、具体的な協力内容を話し合っておくことが大切です。
準備しておくと便利なもの
- ママ向け:冷却用の保冷剤、母乳パッド、締め付けすぎないブラジャー
- 赤ちゃん向け:ストローマグ、お気に入りのぬいぐるみ、新しいおもちゃや絵本
実践期間(授乳回数を減らす)
日中の授乳から減らす:比較的こだわりが少ない昼間の授乳から減らしていきます。朝起きた時や寝る前など、赤ちゃんが強く執着する時間帯は最後に残しましょう。おっぱいを欲しそうな素振りを見せたら、別のことに興味を向けさせる工夫を。お散歩に誘ったり、新しいおもちゃで遊んだり、「おやつ食べようか」と提案するのも効果的です。
代わりの水分補給や食事: 1歳未満で栄養面が心配な場合は、フォローアップミルクをコップやストローマグで与えましょう。1歳を過ぎていれば、牛乳に切り替えることも可能です。
最終段階(夜間授乳のやめ方)
パパに協力してもらう:最も効果的な方法は、寝かしつけや夜泣き対応をパパに代わってもらうこと。パパが抱っこやトントンで寝かしつけることで、赤ちゃんはおっぱい以外の方法でも安心できることを学んでいきます。
ママが対応する場合: 徐々に授乳時間を短くしていく方法を試してみましょう。10分→5分→2分と短くし、最終的には抱っこやトントン、お茶や白湯で乗り切ります。最初の数日間は赤ちゃんが泣き続けるかもしれません。辛いですが、一貫した態度を示すことが、新しい習慣を受け入れるための近道です。
乳房トラブルを防ぐセルフケアと対処法

断乳や卒乳のプロセスでは、ママのおっぱいのケアがとても大切になります。赤ちゃんへの授乳が終わっても、母乳の生成はすぐに止まるわけではないため、おっぱいが張って痛みを感じることがあります。
おっぱいの張りへの対応方法
- 冷やすケア
おっぱいが張って痛い時は、タオルで包んだ保冷剤や冷やしたキャベツの葉で乳房を冷やしてみてください。 - 圧抜き程度に搾る
「完全に搾りきらないこと」が重要。おっぱいは搾れば搾るほど作られるため、痛みが和らぐまで少しだけ搾るのがコツです。 - しこりができた時
入浴時など体が温まっている時に、しこりの部分から乳頭に向かって優しくマッサージを。その後、痛みが和らぐ程度に少しだけ搾乳します。
食事で気をつけること
- 控えめにしたい食事
揚げ物やクリーム類などの高脂肪食、ケーキや菓子パンなどの高糖質食は控えめに。これらは乳腺を詰まらせやすくなります。 - 水分摂取
極端に減らす必要はありません。セージやペパーミントなどのハーブティーには、母乳分泌を抑制する作用があると言われています。
こんな症状は早めの受診を
以下の症状が見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。
- 乳房の一部が赤く腫れて熱を持っている
- しこりがあり、その部分が激しく痛む
- 38度以上の発熱、悪寒、関節痛などの全身症状
- 高熱がなかなか下がらない
- 乳房の痛みが日常生活に支障をきたす
相談先:産婦人科、母乳外来、助産院
赤ちゃんとママの心のケア

断乳や卒乳は、心に大きな影響を与える出来事です。授乳が終わっても、親子の愛情や絆が変わらないことを、具体的な行動で伝えていくことが大切です。
赤ちゃんへの声かけと接し方
- ぐずった時の対応:「おっぱいが欲しいんだね、寂しいね」と気持ちを受け止めて共感を。その上で、「でももうおっぱいとはバイバイしたから、ぎゅーっと抱っこしようか」と優しく、しかし毅然とした態度で別の提案をしましょう。
- 授乳以外のスキンシップ:意識的に抱きしめる回数を増やしたり、膝の上に座らせて絵本を読んであげたり、ベビーマッサージを取り入れたりしましょう。肌と肌の触れ合いを通じて「おっぱいがなくてもママは大好きだよ」というメッセージを伝え続けることが大切です。
ママ自身の気持ちとの向き合い方
- 罪悪感を手放す:母乳育児の期間の長さは、ママの愛情の深さや「良いお母さん」であるかどうかの尺度ではありません。大切なのは、ママが心身ともに健康で、笑顔でいられること。ご自身の決断に自信を持ってください。
- 頑張った自分をねぎらう:授乳中は控えていたカフェインやアルコールを少し楽しむ、一人でゆっくりお風呂に浸かる、好きなスイーツを食べるなど、ご自身が心からリラックスできる「ご褒美タイム」を設けましょう。
- これからも続く親子の絆:断乳や卒乳は、寂しい「終わり」ではありません。ママと赤ちゃんの関係が、新しいステージへと進むための、喜ばしい「卒業」です。
よくあるご質問|母乳のやめ方Q&A
ここでは、母乳のやめ方に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 断乳のために薬は使った方がいいですか?
基本的には、時間をかけて授乳回数を減らし、自然に母乳の分泌量を減少させていく方法が、母体への負担が最も少ないと考えられています。
カベルゴリンなどの母乳分泌抑制薬は、副作用を伴うことがあるため、急な医療上の理由で断乳が必要な場合など、医師が必要性を判断した場合に限定して処方されます。使用を検討される場合は、必ず医師や助産師に相談してください。
Q2. 急にやめないといけない場合はどうすれば?
急な断乳は、乳房の激しい張りや乳腺炎のリスクが高まります。痛みが辛い場合は、乳房を冷やしたり、圧抜き程度に少しだけ搾乳したりして不快感を和らげましょう。できるだけ早く産婦人科を受診し、状況を相談してください。
赤ちゃんについては、パートナーや他のご家族に協力してもらい、抱っこやスキンシップで安心感を与えてあげてください。
Q3. 断乳後、残ったおっぱいはどうなりますか?
断乳後、おっぱいに残っていた母乳は、時間をかけて徐々に体内に吸収されていきます。数ヶ月後、あるいは1年以上経過してからでも、おっぱいを強く押すと少しだけ母乳が滲み出ることがありますが、これは異常ではありません。
ただし、断乳完了から数ヶ月以上経った後に新しくしこりができた場合は、念のため医療機関に相談することをおすすめします。
Q4. 次の妊娠・出産時の母乳への影響はありますか?
今回の断乳経験が、次の妊娠・出産時の母乳育児に影響することは、ほとんどありません。乳腺は妊娠のたびにリセットされ、次の赤ちゃんのために新たに母乳を作る準備を始めます。
何か不安なことがあれば、かかりつけの産婦人科医や助産師に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしてください。
まとめ
母乳育児の終わり方は、それぞれの親子に合った形があります。大切なのは、周りの情報や「こうあるべき」という理想に囚われすぎず、あなたと赤ちゃんのペースを尊重することです。
母乳育児を終えることは、親子関係の「終わり」ではありません。むしろ、一つ大きな成長を遂げ、新たな関係性を築いていく「始まり」です。
少しでも不安なことや気になることがあれば、一人で抱え込まず、かかりつけの産婦人科や助産師、保健師にご相談ください。あなたと赤ちゃんが、安心して次のステージへ進めるよう、私たちはいつでもサポートいたします。




