授乳中の風邪対策|薬の選び方と赤ちゃんへの影響【医師監修】

授乳中の風邪対策|薬の選び方と赤ちゃんへの影響【医師監修】

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授乳中に風邪をひくと「母乳を続けても大丈夫?」「薬は飲んでいいの?」と不安になりますよね。この記事では、授乳中のママが風邪をひいたときの正しい対処法、安全に使える薬の選び方、赤ちゃんへの感染予防まで、医師監修のもと分かりやすく解説します。
神谷 仁
神谷 仁かみや母と子のクリニックかみや母と子のクリニック院長/沖縄県産婦人科医会副会長1985年5月に琉球大学産婦人科に入局し、昨年6月に分娩取り扱いを終了するまで2万人以上の分娩に立ち会ってきました。生理、出産、育児、更年期等の悩みなど女性の幅広い年齢層に対応できるクリニックの院長として地域医療に取り組んでおります。プロフィール詳細を見る

授乳中に風邪をひいても母乳は続けられます

授乳中のあかちゃんと母

授乳中に風邪をひいてしまうと、「このまま母乳をあげ続けて大丈夫なのかな」と心配になる方も多いでしょう。結論からお伝えすると、風邪をひいても授乳は続けていただいて問題ありません。授乳を続けることについては、赤ちゃんへの影響を心配される方も多いですが、一般的に授乳の継続が推奨される場合が多いとされています。

風邪の症状があるとママ自身もつらいですし、赤ちゃんへの影響を考えると不安になるお気持ちはよく分かります。しかし、正しい知識を持つことで、安心して授乳を継続できるようになります。ここでは、なぜ授乳を続けても良いのか、その理由を詳しくご説明していきます。

母乳から風邪がうつる心配はほとんどありません

風邪の原因となるウイルスは、ライノウイルスやコロナウイルスなど多くの種類がありますが、これらのウイルスが母乳を通して赤ちゃんに感染することはほとんどありません。

母乳はお母さんの血液から作られていますが、すべての成分がそのまま母乳に移行するわけではないのです。母乳は選択的に必要な栄養素や免疫成分だけを取り込む仕組みになっており、ウイルスそのものが母乳中に混入する可能性は極めて低いことが分かっています。

ママの体内でウイルス感染が起こると、免疫システムが働いてウイルスに対抗する「抗体」が作られます。この抗体は血液中に存在し、一部が母乳にも移行しますが、ウイルス本体が移行するわけではありません。そのため、母乳を飲ませることで赤ちゃんにウイルスを感染させる心配はほとんどないのです。

風邪の主な感染経路は、咳やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手や物を介した「接触感染」です。母乳自体からの感染リスクは極めて低いため、安心して授乳を続けていただけます。

母乳を通じて赤ちゃんの健康をサポート

ママが風邪をひいた際に体内で作られた抗体が、母乳に含まれることがあるといわれています。特に「IgA抗体」と呼ばれる抗体が含まれることが多く確認されており、ママの抗体が母乳を通じて赤ちゃんに届くことで、赤ちゃんの免疫をサポートする可能性があります。

このように授乳は赤ちゃんの健康を支える大切な役割を担っていますが、ご不安な場合は、医師や専門家にご相談のうえ、授乳を続けていただくことをおすすめします。

授乳中に服用できる薬と選び方のポイント

授乳中に風邪をひいたとき、「薬を飲んでも大丈夫なのか」と不安になる方は多いでしょう。無理に症状を我慢し続けると、回復が遅れて育児に支障が出てしまうこともあります。なお授乳中に使用できる薬がある場合もありますが、使用前には医師や薬剤師にご相談ください。

このセクションでは、市販薬を選ぶときの基本ルールや、比較的安全とされる成分、そして病院を受診する際のポイントについて詳しくご説明します。適切な薬を選ぶことで、つらい症状を和らげながら、赤ちゃんとの時間も無理なく過ごせるようになります。

市販薬を選ぶときの基本ルール

ドラッグストアなどで市販薬を選ぶ際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。授乳中のママがまず意識したいのは、複数の症状にまとめて効く「総合感冒薬」ではなく、ご自身のつらい症状に合わせて「単一成分」の薬を選ぶことです。

例えば

  • 熱だけなら → 解熱鎮痛剤
  • 咳だけなら → 咳止め
  • 鼻水だけなら → 鼻水止め

このようにピンポイントで薬を選ぶことが大切です。総合感冒薬には様々な成分が配合されているため、必要のない成分まで赤ちゃんに移行してしまう可能性があります。不要な成分の摂取を避け、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えるためにも、単一成分の薬がおすすめです。

また、選ぶ際には必ず薬剤師に「授乳中であること」を伝えて相談するようにしてください。薬剤師は、薬の成分が母乳に移行する割合や赤ちゃんへの影響について専門的な知識を持っていますので、安心して相談できます。

比較的安全な解熱鎮痛成分と注意が必要な成分

授乳中でも比較的安心して使用できる薬の成分をご紹介します。

【比較的安全な成分】

解熱鎮痛剤

  • アセトアミノフェン:授乳中の方にも使用されることが多い成分の1つです。母乳への移行が少ないとされ、乳児への影響についても報告は限られていますが、使用にあたっては医師や薬剤師にご相談ください。
  • イブプロフェン:短期間の使用であれば比較的安全とされています。ただし、使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

咳止め・去痰薬

  • デキストロメトルファン(咳止め)
  • カルボシステインアンブロキソール(去痰薬)

これらの成分は、適切な用量であれば授乳中でも使用できることが多いです。

【注意が必要な成分】

  • アスピリン(アセチルサリチル酸):乳児にライ症候群という重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、授乳中は避けるべき成分です。
  • プソイドエフェドリンなどの血管収縮作用がある鼻づまり改善薬:母乳の分泌を抑制する可能性があります。
  • 抗ヒスタミン薬:鼻水やアレルギー症状に使われますが、赤ちゃんに眠気を引き起こす副作用があるものもあります。

薬を選ぶ際には、成分表示をしっかり確認し、不明な点があれば専門家に確認するようにしてください。

【漢方薬について】

「漢方薬は自然由来だから安全」というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、漢方薬も医薬品であり、授乳中に服用する際には注意が必要です。

特に、風邪のひき始めによく使われる「葛根湯(かっこんとう)」には、「麻黄(マオウ)」という成分が含まれていることがあります。麻黄は交感神経を刺激する作用があるため、母乳の分泌を抑制したり、赤ちゃんに興奮や不眠を引き起こしたりする可能性があります。

漢方薬であっても、自己判断で安易に服用するのは避け、必ず医師や薬剤師に「授乳中であること」を伝え、適切なものを選んでもらうようにしましょう。

病院を受診するときに伝えるべきこと

市販薬で様子を見るよりも、医療機関を受診して医師に薬を処方してもらう方が、より安全で適切な治療を受けられる場合があります。特に症状が重い場合や、市販薬で改善しない場合は、ためらわずに病院を受診しましょう。

病院を受診する際に最も重要なのは、診察時に必ず「授乳中であること」を医師に明確に伝えることです。これは内科、耳鼻咽喉科、歯科など、どの診療科にかかる場合でも同じです。

問診票の記入時だけでなく、医師の診察が始まった際にも口頭でしっかりと伝えるようにしてください。この一言があると、医師は薬を処方する際に、母乳への影響を考慮して薬剤を選択することが一般的です。

また、薬を飲んだ後の授乳タイミングについても気になる方が多いでしょう。薬の服用タイミングについては、授乳の直後に服用する方法が提案されることもあります。この方法により、次の授乳までの時間を空けることができますが、薬剤によっては効果が異なる場合もあるため、詳細は医師や薬剤師にご相談ください。

ただし、処方された薬の種類によっては、授乳タイミングを特に気にする必要がないものも多くあります。不安な場合は、自己判断せず、必ず処方してくれた医師や薬剤師に具体的な指示を仰ぐのが最も確実です。

体調が優れない中で育児を続けるのは本当に大変です。無理に我慢せず、専門家の力を借りて安心して回復を目指しましょう。

関連記事:母乳が少ない原因と対処法!量を増やすコツと不足のサイン

症状を和らげる自宅でのセルフケア

授乳中に風邪をひいたとき、薬を飲むことに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、薬と併用して、できるだけ早く体調を回復させたいと考える方も多いでしょう。このセクションでは、授乳中のママの身体に負担をかけずに、風邪のつらい症状を和らげるためのセルフケア方法をご紹介します。

十分な休息と適切な栄養摂取は、風邪からの回復だけでなく、大切な赤ちゃんへの授乳を続ける上でも非常に重要です。

水分補給・栄養・休養の基本ケア

授乳中のママが風邪をひいたとき、セルフケアの最も基本となるのは「水分補給」「栄養」「休養」の3つです。

【水分補給】

発熱によって失われがちな体内の水分を補い、脱水症状を防ぐことが非常に重要です。また、母乳の約9割は水分でできているため、十分な水分摂取は、健康的な生活や授乳を続ける上で大切です。

  • 水やお茶をこまめに飲む
  • 経口補水液を活用する
  • スポーツドリンクも良いですが、糖分が多いので飲みすぎには注意

少量ずつ頻繁に(少量頻回で)摂取するよう心がけましょう。

【栄養】

風邪で食欲がないときでも、消化が良く温かいものを摂ることが体調管理に役立ちます。

  • おかゆ
  • うどん
  • 具沢山のスープ

これらは身体を温めながら必要な栄養を補給できるためおすすめです。無理にたくさん食べる必要はありませんが、少しずつでも口にするようにしましょう。

【休養】

何よりも大切なのが休養です。育児中はまとまった休息を取るのが難しいかもしれませんが、睡眠不足は免疫力を低下させ、風邪の治りを遅らせてしまいます。

パートナーやご家族に協力してもらい、意識的に休む時間を作るようにしてください。赤ちゃんが寝ているときは、家事を後回しにしてでも一緒に横になることをおすすめします。


症状別の対処法(発熱・喉の痛み・咳・鼻水)

風邪をひくと、高熱、喉の痛み、咳、鼻水など、さまざまな症状が現れます。それぞれの症状に合わせて、自宅で実践できる対処法をご紹介します。

【発熱があるとき】

高熱で身体がだるいときは、効率的に体を冷やすことが大切です。太い血管が体の表面近くを通っている場所を冷やすと、全身の体温を効果的に下げられます。

冷やすと良い場所

  • 首筋
  • 脇の下
  • 足の付け根(鼠径部)

冷たいタオルや冷却シート、保冷剤などを当てましょう。保冷剤を使用する際は、凍傷を防ぐために必ずタオルなどで包んでから当ててください。

また、発熱時は大量の汗をかきやすく、脱水症状になりやすいので水分補給が重要です。一度にたくさん飲むのがつらいときは、経口補水液や麦茶などを少量ずつ頻繁に摂取するよう心がけましょう。

【喉の痛みがあるとき】

喉の痛みは、乾燥によって悪化することが多い症状です。

対処法

  • 加湿器を使用する
  • 濡れタオルを室内に干す
  • 室内の湿度を50〜60%に保つ
  • マスクを着用して喉や鼻の粘膜を乾燥から守る

おすすめの飲み物

  • 温かい緑茶など喉に優しい飲み物
  • 生姜湯などの温かい飲み物
  • はちみつ大根(大根を細かく刻み、はちみつに漬け込んで出てきた汁)

ただし、はちみつは1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。ママが摂取したものが赤ちゃんに直接影響することは少ないですが、誤って赤ちゃんが口にしないよう十分注意しましょう。

【咳・鼻水がひどいとき】

咳や鼻づまりは、呼吸を苦しくさせ、夜間の睡眠を妨げることがあります。

咳がひどいときの対処法

  • 上半身を少し起こした姿勢で寝る
  • クッションや枕を重ねて、背中から頭にかけて少し高くする

鼻づまりの対処法

  • 鼻うがい(鼻洗浄):市販の鼻うがいキットや生理食塩水を使用
  • 蒸しタオルを鼻の付け根に当てて温める

鼻うがいは正しく行わないと耳に水が入ってしまうことがあるため、説明書をよく読み、無理のない範囲で行ってください。

これらのセルフケアを実践することで、症状が軽減される場合があります。ただし、症状が改善しない場合や悪化した場合は、無理せず医療機関を受診しましょう。

赤ちゃんへの感染を防ぐ予防対策

母乳自体は赤ちゃんにとって安全ですが、ママが風邪をひいているときは、赤ちゃんへの感染予防をしっかり行うことが大切です。風邪の主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」ですので、これらをしっかり防ぐことで、赤ちゃんを風邪から守ることができます。

このセクションでは、具体的な感染予防の方法と、体調が悪いときでも無理なく授乳を続けるための工夫をご紹介します。

飛沫感染・接触感染を防ぐ具体的な方法

風邪のウイルスは、ママの咳やくしゃみで飛び散った飛沫を赤ちゃんが吸い込むことで感染します。また、ママの手や触れた物に付着したウイルスが、赤ちゃんの口や鼻から体内に侵入することもあります。これらの感染経路を防ぐための具体的な対策をご紹介します。

【飛沫感染を防ぐ対策】

  • マスクの着用:咳やくしゃみが出る場合は必ずマスクを着用しましょう。できれば不織布マスクを選び、鼻と口をしっかり覆うように着用してください。
  • 咳エチケット:授乳中に咳やくしゃみをする際は、赤ちゃんから顔をそらすようにしましょう。
  • 距離を保つ:授乳中に赤ちゃんに顔を近づけすぎないよう意識することも有効です。

【接触感染を防ぐ対策】

  • こまめな手洗い:赤ちゃんに触れる前や授乳の前には、石鹸を使って流水で丁寧に手を洗いましょう。指の間や爪の周りまでしっかり洗うことが大切です。
  • アルコール消毒:手洗いの後にアルコール消毒液も活用して、手指の清潔を保ちましょう。
  • タオルや衣類の共用を避ける:赤ちゃんと同じタオルや衣類を使わないようにしましょう。
  • おむつ替えや着替えの際も手洗いを徹底:赤ちゃんのお世話をする前後には、必ず手洗いを行いましょう。

【その他の予防対策】

  • 部屋の換気:定期的に窓を開けて換気し、ウイルスの濃度を下げましょう。
  • 適度な湿度を保つ:加湿器を使用して、室内の湿度を50〜60%に保つことで、ウイルスの活動を抑えられます。
  • 赤ちゃんが触れる場所の消毒:ドアノブやテーブルなど、ママが頻繁に触れる場所を定期的に消毒すると安心です。

これらの対策をしっかり行うことで、赤ちゃんへの感染リスクを大幅に減らすことができます。感染予防を徹底しながら、安心して授乳を続けましょう。

体調が悪いときの授乳の工夫

授乳は赤ちゃんに栄養を与える大切な時間ですが、ママにとっては体力を使う行為でもあります。風邪で体調が優れないときは、普段と同じように授乳をするのがつらいと感じることもあるでしょう。このセクションでは、ママの負担を少しでも軽減し、楽な気持ちで授乳を続けられるような具体的な工夫をご紹介します。

【楽な姿勢での授乳方法】

風邪で身体がつらいときは、楽な姿勢で授乳することが大切です。

添え乳(そえちち)

  • 横になったまま授乳できる方法
  • ママの身体への負担が少なく、休息を取りながら授乳できる
  • 赤ちゃんを横に寝かせ、ママも横になって授乳する

注意点

  • 赤ちゃんの顔が布団や枕で覆われないよう、窒息に十分注意してください

リクライニング姿勢での授乳

  • ソファやベッドでクッションを背中や肘の下に多めに置く
  • 上半身を少し起こした姿勢で授乳する
  • 全身の力を抜いて楽に授乳できる

ママが一番楽だと感じる姿勢で、無理なく授乳を続けましょう。

【搾乳して哺乳瓶であげる選択肢】

直接授乳をするのがつらいほど体調が悪いときや、まとまった休息を取りたいときには、搾乳して哺乳瓶で赤ちゃんに母乳を与えるという選択肢もあります。

搾乳のメリット

  • ママが直接授乳しなくても母乳を確保できる
  • パートナーや他のご家族に哺乳瓶で与えてもらえる
  • ママは安心して身体を休めることができる

搾乳器(手動または電動)を使えば、効率的に母乳を搾ることができます。搾乳した母乳は、清潔な容器に保存し、冷蔵または冷凍して保管しましょう。

保存の目安

  • 冷蔵:4℃以下で24時間
  • 冷凍:-18℃以下で3〜6ヶ月

定期的に搾乳することで、母乳の分泌量を維持しやすくなる場合があります。体調が回復したら、また直接授乳に戻すことも可能ですので、無理せず上手に活用してみてください。

【家族の協力を得る】

風邪をひいたときこそ、パートナーやご家族に協力してもらいましょう。

  • 夜間の授乳を代わってもらう(搾乳した母乳やミルクで)
  • 家事を分担してもらう
  • 赤ちゃんのお世話を手伝ってもらう

「自分が全部やらなきゃ」と思わずに、周りの力を借りることが、早く回復するためにも大切です。

体調が悪いときは、自分を労わりながら、できる範囲で授乳を続けていきましょう。

こんなときは医療機関を受診しましょう

風邪の多くは自宅での安静や市販薬で改善に向かいますが、中には医療機関の受診が必要な症状もあります。「ただの風邪だから」と自己判断せずに、専門家の診察を受けるべきタイミングを知っておくことが大切です。

このセクションでは、ママ自身が受診すべき症状と、赤ちゃんが緊急に受診すべきサインについて詳しく解説します。

ママが受診すべき症状

授乳中のママが風邪をひいた場合、多くは自宅での安静や市販薬で改善しますが、以下のような症状が見られた場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

【すぐに受診すべき症状】

  • 38.5度以上の高熱が2日以上続く:肺炎などの合併症の可能性があります。
  • 息苦しさ、胸の痛み、呼吸がしにくい:呼吸器系の重篤な感染症が疑われます。
  • 黄色や緑色の濃い鼻水や痰が出る:細菌感染を併発している可能性があるため、医師の診察を受けることをおすすめします。
  • 水分が全く摂れない、口の渇き、尿量の減少:脱水症状のサインです。症状によっては医療機関での治療が必要となる場合があります。
  • 市販薬を数日服用しても症状が全く改善しない、または悪化している:自己判断せず、医師の診察を受けましょう。

【産後のママ特有の注意点】

産後のママの場合、風邪のような症状の裏に乳腺炎など他の病気が隠れていることもあります。

  • 胸の張りや痛み、しこり、赤みがある:乳腺炎の可能性があります。
  • 悪寒を伴う高熱が突然出る:乳腺炎の典型的な症状です。

これらの症状がある場合は、かかりつけの産婦人科にも相談することを検討してください。

我慢せずに専門家の判断を仰ぐことが、ママ自身の早期回復と赤ちゃんとの平穏な授乳生活を守ることに繋がります。

関連記事:【乳腺炎と食事の関係】予防に効果的な食材と避けるべき食べ物

赤ちゃんが受診すべき緊急のサイン

万が一、ママの風邪が赤ちゃんにうつってしまった場合、赤ちゃんの様子をよく観察することが大切です。以下の症状が見られた場合は、迷わずすぐに小児科を受診してください。特に、新生児や生後間もない赤ちゃんの場合、症状が急変することがあるため、注意が必要です。

【緊急受診が必要な症状】

  • 生後3ヶ月未満で38度以上の発熱がある:重篤な感染症の可能性があります。
  • 呼吸が速い、肩で息をしている、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音が聞こえる:呼吸困難のサインです。
  • 顔色や唇の色が悪い(紫色になっている):酸素が足りていない可能性があります。
  • 水分を全く受け付けず、半日以上おしっこが出ていない:脱水症状が進んでいます。
  • ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い、または全く反応しない:意識障害の可能性があります。
  • けいれんを起こした:救急車を呼ぶレベルの緊急事態です。
  • 激しく泣き続ける、または逆に泣き声が弱々しい:何らかの異常のサインです。

これらの症状は、重篤な状態である可能性が考えられます。「少し様子を見よう」と考えるのではなく、「いつもと違う」「何かおかしい」と感じた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

【夜間や休日の対応】

夜間や休日でかかりつけ医が休診の場合は:

  • 地域の小児救急医療機関を利用する
  • 小児救急電話相談(#8000)を活用する

小児救急電話相談では、専門の相談員や看護師が症状を聞き取り、病院受診の必要性や家庭での対処法についてアドバイスしてくれます。

赤ちゃんは自分で「ここが辛い」と教えてくれません。お母さんやお父さんが赤ちゃんの小さな変化に気づいてあげることが、早期発見、早期治療につながります。

関連記事:小児科はいつまで通える?受診の目安と内科への切り替え


よくあるご質問

授乳中に風邪をひいたとき、多くのママが抱える疑問や不安にお答えします。

Q:薬を飲んだ後の授乳タイミングは?

「薬を飲んだら、いつ授乳すれば良いの?」という質問をよくいただきます。

基本的な考え方: 一般的には、授乳の直後に薬を服用するのがおすすめです。こうすることで、次の授乳までの時間を最大限に空けることができ、その間に薬の血中濃度が下がり、母乳へ移行する薬の量も減少すると考えられます。

ただし注意点: これはあくまで一般的な工夫であり、処方された薬の種類によっては、授乳タイミングを特に気にする必要がないものも多くあります。

不安な場合は

・自己判断せず、処方してくれた医師や薬剤師に具体的な指示を仰ぐのが最も確実です

・「この薬は授乳前に飲んでも大丈夫ですか?」と積極的に質問しましょう

安心して服用し、授乳を続けられるよう、疑問があれば遠慮なく専門家に相談してください。

Q:漢方薬なら安全ですか?

「漢方薬は自然由来だから安全」というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、漢方薬も医薬品であり、授乳中に服用する際には注意が必要です。

注意が必要な例 風邪のひき始めによく使われる「葛根湯(かっこんとう)」には、「麻黄(マオウ)」という成分が含まれていることがあります。

麻黄の影響

・交感神経を刺激する作用がある

・母乳の分泌を抑制する可能性がある

・赤ちゃんに興奮や不眠を引き起こす可能性がある

安全に使用するために 漢方薬であっても、自己判断で安易に服用するのは避けてください。必ず、医師や薬剤師に「授乳中であること」を伝え、ご自身の体質や症状に合った漢方薬を処方してもらうか、適切なものを選んでもらうようにしましょう。

専門家の指導のもとで、漢方薬が選択される場合もあります。

Q:オンライン診療は利用できますか?

小さな赤ちゃんを育てているママにとって、自身の体調が悪くても病院に行くのは大きな負担です。そんなときに役立つのがオンライン診療です。

オンライン診療のメリット

・スマートフォンやパソコンを使って自宅から医師の診察を受けられる

・移動の負担がない

・病院へ行かずに診療を受けることで、院内感染リスクを減らすことが期待できる

・必要に応じて薬を処方してもらうことも可能

利用方法: 事前にサービス提供機関のウェブサイトなどで利用方法を確認し、いざという時のために登録しておくと安心です。

注意点: 重篤な症状や対面での診察が必要と判断された場合は、速やかに医療機関を受診するよう指示がありますので、その際は指示に従ってください。

電話相談窓口も活用しましょう: 夜間や休日に判断に迷った際には、自治体や公的機関が提供している「子ども医療電話相談(#8000)」などの電話相談窓口も活用できます。専門の相談員や看護師が症状を聞き取り、病院受診の必要性や家庭での対処法についてアドバイスしてくれます。

これらのサービスを上手に利用することで、ママは孤立感を覚えることなく、必要な時に適切な医療的な助言を得ることができます。


まとめ:安心して授乳を続けながら風邪を乗り越えましょう

授乳中に風邪をひいてしまうと、ご自身のつらさに加えて、赤ちゃんへの影響や授乳を続けて良いのかといった不安を抱えてしまいますよね。しかし、正しい知識を持つことで、多くの不安は解消され、安心して対処できるようになります。

この記事の重要なポイントをおさらいしましょう:

  • 授乳は続けて大丈夫な場合が多い:一般的に、風邪のウイルスが母乳を通じて赤ちゃんに感染するリスクは低いとされていますが、心配な場合は医師にご相談ください。母乳にはママの体内で作られた抗体が含まれている場合があり、赤ちゃんの健康を守る働きが期待されています。
  • 授乳中でも使用できる薬はあります:アセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛剤は、授乳中でも使用が検討されることがありますが、必ず医師や薬剤師にご相談ください。
  • 感染予防が何より大切です:赤ちゃんへの感染経路は母乳ではなく、飛沫や接触がメインです。マスクの着用、こまめな手洗い、手指消毒といった感染予防策を徹底しましょう。
  • セルフケアも効果的です:水分補給や栄養のある食事、十分な休養を心がけることが、体調管理に役立ちます。パートナーやご家族に協力を求め、無理なく乗り切る工夫を取り入れてください。
  • 迷ったらすぐに相談を:症状が重い場合や、市販薬で改善しない場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。オンライン診療や電話相談サービスも上手に活用してください。

授乳期間中のママの体調不良は、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。適切な知識と対処法を知ることで、不安を和らげることができ、安心して過ごすための一助となります。

ご自身の体調を第一に考えながら、大切な赤ちゃんとの授乳期間を過ごしてください。「少しでも不安があれば、いつでも医療機関にご相談ください」という気持ちを忘れずに、無理をせず、周りの助けも借りながら、この時期を乗り越えていきましょう。

ママの健康が、赤ちゃんの笑顔につながります。どうぞご自愛ください。

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